「もっと早く制度や手当について知りたかった」
重症心身障害のあるお子さんとの在宅生活では、医療的ケアに使う機器や消耗品、訪問看護、デイサービスなど、医療や福祉にかかる費用について考える場面が多くあります。
その一方で、こうした負担を軽くするための公的な手当や給付、医療費助成、福祉サービスの制度もあります。
ただ、制度によって対象となる条件や申請先が異なり、名前も似ているため、「どの制度が利用できるのかわからない」と感じる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、大阪府の情報を中心に、重症心身障害のあるお子さんがいるご家庭が利用できる主な制度を、「手当」「医療費助成」「福祉サービスの費用」の3つに分けて紹介します。
金額や制度の内容は、令和8年(2026年)4月時点の情報をもとにしています。
制度の内容や支給額などは変更されることがあるため、実際に申請するときは、各制度の窓口や自治体の最新情報も確認してください。

監修者:坂東 知子(ばんどう ともこ)
経歴
大阪急性期総合医療センター 救急病棟にて12年勤務。
実績
令和2年に「こどもデイサービスさくら」を設立。
現在は3事業所を運営し、これまでに50名以上の医療的ケア児・重症心身障害児の支援に携わる。
資格・専門
看護師・保育士
専門分野
・医療的ケア児支援
・重症心身障害児支援
・在宅医療・在宅ケア
・小児看護
【手当】

参照:photoAC
①特別児童扶養手当|保護者に支給される国の手当
どんな制度か
特別児童扶養手当は、一定の障害がある20歳未満の児童を家庭で養育している保護者などに支給される国の手当です。
重症心身障害のあるお子さんも、障害の状態などが認定基準に該当すれば、対象となる場合があります。
利用できるかどうかは、自治体によって判断が分かれることもあるので、まずは窓口に聞いてみるのが早道です。
支給額(令和8年4月改定)
| 等級 | 月額 |
| 1級(重度障害) | 58,450円 |
| 2級(中度障害) | 38,930円 |
重症心身障害児は一般的に1級に認定されます。
毎年物価に応じて改定される「自動物価スライド制」が適用されており、金額は毎年4月に見直されます。
支給時期
年3回、4月・8月・12月に前月分までがまとめて支給されます。(例:4月支給=12〜3月分)
所得制限
受給者(保護者)本人および配偶者・扶養義務者の所得に応じて支給が停止される場合があります。
所得制限の基準は扶養親族の人数によって異なります。
注意点
障害を理由とする年金(障害基礎年金など)をお子さん本人が受給している場合は、特別児童扶養手当は支給されません。
施設に入所している場合も対象外となります。
申請に必要なもの
・所定の診断書
・身体障害者手帳と療育手帳
・戸籍謄本または抄本
・世帯全員の住民票の写し
・介護者(請求者)名義の銀行通帳
・マイナンバーカード
(印鑑 ※自治体により不要な場合あり)
申請窓口
お住まいの市区町村の障害福祉課または子ども家庭センター
②障害児福祉手当|重度障害児本人に支給される国の手当
どんな制度か
障害児福祉手当は、重度の障害があるために日常生活において常時の介護を必要とする20歳未満の児童本人に支給される手当です。
特別児童扶養手当が「保護者」への手当であるのに対し、こちらは「子ども本人」への手当です。
支給額(令和8年4月改定)
月額16,560円
支給時期
年4回、2月・5月・8月・11月に3か月分ずつ支給されます。(例:5月支給=2〜4月分)
所得制限
本人・配偶者(該当する場合)・扶養義務者の所得が一定額以上の場合は支給停止となります。
注意点
障害を理由とする公的年金(障害基礎年金など)を受給している場合は支給されません。
施設入所中・病院に3か月を超えて入院中の場合も対象外です。
申請に必要なもの
・所定の診断書
・身体障害者手帳と療育手帳
・戸籍謄本または抄本
・世帯全員の住民票の写し
・介護者(請求者)名義の銀行通帳
・マイナンバーカード
(印鑑 ※自治体により不要な場合あり)
特別児童扶養手当との比較
| 項目 | 特別児童扶養手当 | 障害児福祉手当 |
| 支給対象者 | 保護者 | 障害児本人 |
| 対象障害の程度 | 中度以上(1級・2級) | 重度(常時介護が必要) |
| 月額(令和8年4月〜) | 1級58,450円・2級38,930円 | 16,560円 |
| 支給回数 | 年3回 | 年4回 |
| 年金との併給 | 不可 | 不可 |
所得制限の基準が異なるため、特別児童扶養手当の所得制限に引っかかっても、障害児福祉手当は受給できる場合があります。
両方の手当を同時に受給することは可能です。
申請窓口
お住まいの市区町村の障害福祉課
③大阪府重度障がい者在宅生活応援制度|大阪府独自の介護者への給付金
どんな制度か
大阪府が独自に実施している制度で、重度の障害のある方と同居して在宅で介護している家族などに対し、月額10,000円が支給されます。
正式名称は「重度障がい者在宅生活応援制度(重度障がい者在宅介護支援給付金)」です。
国の手当と重複して受給できるため、知っておきたい大阪府独自の制度です。
対象となる条件
以下の2つの手帳を両方持っているお子さん(または大人)と同居し、在宅で介護している方が対象です。
・身体障害者手帳:1級または2級
・療育手帳:A(重度)
重症心身障害児はほぼすべての方が両方の手帳を取得しており、対象に該当します。
支給額と支給月
月額10,000円が、年4回1月・4月・7月・10月に3か月分ずつまとめて支給されます。
(例:1月支給=10〜12月分)
対象外になるケース
以下のいずれかに該当する期間は支給されません。
・施設やグループホームに入所している
・病院に3か月を超えて入院している(付き添いが必要な場合を除く)
・本人が「特別障害者手当」を受給している
申請に必要なもの
・身体障害者手帳と療育手帳
・介護者(請求者)名義の銀行通帳
・印鑑(自治体により不要な場合あり)
・マイナンバーカード
申請窓口
お住まいの市役所・区役所の障害福祉担当窓口
④児童手当|すべての子どもの保護者に支給
令和6年(2024年)10月の制度拡充により、児童手当の所得制限が撤廃され、高校生年代(18歳の年度末)まで対象が拡大されました。
| 年齢 | 月額 |
| 3歳未満 | 15,000円(第3子以降30,000円) |
| 3歳〜高校生年代 | 10,000円(第3子以降30,000円) |
重症心身障害児のいるご家庭も当然対象となります。
上記の障害関連の手当と同時に受給できます。
偶数月(2・4・6・8・10・12月)に2か月分ずつ支給されます。(例:2月支給=12〜1月分)
【医療費】

参照:photoAC
①重度障がい者医療費助成制度(大阪府・市町村)
どんな制度か
大阪府が市町村の実施する制度に補助する形で運営されている医療費助成制度です。
重度の障害があるお子さんが医療機関を受診する際の自己負担を大幅に軽減できます。
対象者(大阪府の基準)
以下のいずれかに該当する方が対象です。
身体障がい者手帳1級・2級、療育手帳A(重度)、身体障がい者手帳3〜6級かつ療育手帳B1(中度)、精神障がい者保健福祉手帳1級、難病・小児慢性特定疾病の受給者証を持ち一定基準に相当する方。
助成内容(大阪市の例)
医療機関・薬局・訪問看護ステーションごとに、1日あたり最大500円の自己負担となります。
同一月に支払った一部自己負担額が3,000円を超えた場合は、申請によって超過分の払い戻しを受けられます。
注意点
こども医療費助成制度(こども医療証)と重度障がい者医療費助成制度は、どちらか一方を選択して利用する形になります。
お子さんの年齢や状況に合わせて、どちらが有利かを窓口で相談することをおすすめします。
重症心身障害児の場合、訪問看護ステーションの利用頻度が高いため、訪問看護が助成対象になる「重度障がい者医療費助成」を選択するメリットが大きいケースが多いです。
申請窓口
大阪市:各区保健福祉センター医療助成業務担当
堺市・その他市区町村:市区町村の障害福祉担当課
②小児慢性特定疾病医療費助成
重症心身障害の原因となっている疾患が、厚生労働省が定める小児慢性特定疾病(現在16疾患群801疾病)に該当する場合、医療費の自己負担が軽減されます。
対象は18歳未満(継続して治療が必要な場合は20歳未満まで延長可能)の方です。
自己負担は最大でも2割となり、さらに世帯の所得に応じた月額上限額が設定されています。
申請は都道府県・政令市・中核市の窓口を通じて行います。
大阪市の場合は各区保健福祉センター、大阪府(それ以外の市町村)は大阪府各保健所が申請窓口です。
【福祉サービス】

参照:photoAC
①放課後等デイサービス・児童発達支援の利用料
放課後等デイサービスや児童発達支援の利用料は、障害者総合支援法・児童福祉法に基づく公費負担の仕組みにより、原則1割負担となります。
さらに世帯の収入(市区町村民税の課税状況)に応じて、月額の上限額が設定されています。
| 世帯区分 | 月額上限 |
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 市区町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市区町村民税課税世帯(概ね年収890万円未満) | 4,600円 |
| 上記以外 | 37,200円 |
重症心身障害児に特化した事業所(重症心身型)を利用する場合も、同様の仕組みが適用されます。
加えて、児童発達支援については、満3歳から小学校入学前の3年間は幼児教育・保育無償化の対象となり、基本的な利用料が無料になります。
②訪問看護の費用
重症心身障害児の訪問看護は、原則として医療保険が適用されます。
小児慢性特定疾病医療受給者証・こども医療費助成・重度障がい者医療費助成などの医療証を組み合わせることで、自己負担額が月ごとの上限額の範囲に収まる仕組みになっています。
実際の自己負担が0円〜数千円程度に収まるご家庭が多いですが、世帯の所得や利用している助成制度によって変わります。
具体的な金額は利用する訪問看護ステーション・加入している医療保険・各種医療証の組み合わせによって異なるため、事前に事業所に確かめてください。
③日常生活用具給付事業
どんな制度か
障害者総合支援法第77条に基づき、在宅の重度障害児・者に対して、日常生活をより円滑に送るために必要な用具を給付する制度です。
国が品目のカテゴリを定め、各市区町村が具体的な給付品目・基準額・対象者を設定して運営します。
そのため品目や金額は自治体によって異なります。
重症心身障害児に関係する主な品目
重症心身障害児のいるご家庭が特に活用しやすい品目として、以下のものがあります。
| カテゴリ | 品目の例 |
| 在宅療養等支援用具 | 電気式たん吸引器、パルスオキシメーター(血中酸素濃度測定器)、ネブライザー(吸入器) |
| 介護・訓練支援用具 | 特殊マット、体位変換器、訓練いす |
| 排泄管理支援用具 | ストーマ装具、紙おむつ(重度知的障害児を含む自治体あり) |
| 情報・意思疎通支援用具 | 携帯用会話補助装置、視線入力装置など |
吸引器の給付については別記事「重症心身障害児の吸引ケア」でも詳しく解説していますが、必ず申請・支給決定を受けてから購入することが原則です。
先に購入してしまうと給付対象外になるため、注意が必要です。
また品目ごとに耐用年数(例:5年など)が決められており、原則として期間内の再給付はできません。
費用負担
自己負担は原則1割です。
世帯の所得(市区町村民税の課税状況)に応じて月額の負担上限が設定されており、生活保護世帯・住民税非課税世帯は負担が0円となる場合があります。
また、給付には品目ごとに「基準額(上限額)」が設定されており、実際の購入価格が基準額を超える場合は超過分が自己負担になります。
申請の流れ
STEP 1
市区町村の障害福祉課(子ども家庭センター等)の窓口に相談・申請します。
障害者手帳・療育手帳または小児慢性特定疾病医療受給者証、用具の見積書・カタログを持参するとスムーズです。
品目によっては医師の意見書が必要な場合もあります。
STEP 2
支給決定が下りると「日常生活用具給付券」が発行されます。
STEP 3
給付券を業者(医療機器販売店など)に提示し、自己負担額のみを支払って用具を受け取ります(代理受領方式)。
大阪府内の申請窓口
大阪市の場合は各区保健福祉センター(障がい者支援グループ)、堺市の場合は各区子ども家庭センター、その他の市町村は市役所・町村役場の障害福祉担当課が窓口です。
なお、大阪市では令和8年(2026年)3月に給付限度額等の変更が行われているため、最新の基準額は大阪市の公式ページまたは窓口でご確認ください。
まとめ|申請は「早めに」「重ねて」が基本

参照:photoAC
重症心身障害児のいるご家庭が活用できる手当・医療費助成・サービス費用の軽減制度は、複数を同時に利用できるものがほとんどです。
ただし、これらの制度はいずれも「申請主義」です。
申請しなければ支給されません。
知らないまま数年が経過して「あの時期の分はもらえなかった」ということになりがちな制度でもあります。
お子さんの診断や障害認定を受けた後、なるべく早い段階で市区町村の障害福祉課や相談支援専門員に相談し、受けられる制度をまとめることをおすすめします。
支援制度は毎年のように見直されるので、一度知って終わりではなく、デイサービスのスタッフや訪問看護師、相談支援専門員と情報を共有しながら、その都度アップデートしていくのがおすすめです。
「もっと早く知りたかった」を、これから申請する方が感じずに済むように。
参考資料・申請窓口
厚生労働省「特別児童扶養手当について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jidou/index.html
大阪府「重度障がい者在宅生活応援制度」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/23543/6_dai4syou1.pdf
大阪府「重度障がい者医療費助成制度」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090070/kokuho/hukusiiryou/shougaishairyou.html
大阪市「重度障がい者医療費の助成」 https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000369437.html
大阪市「重度障がい者日常生活用具の給付」
https://www.city.osaka.lg.jp/kurashi/category/3020-3-3-4-0-0-0-0-0-0.html
堺市「日常生活用具」 https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/shogaifukushi/shiori/shiori/nichigu.html
こども家庭庁「小児慢性特定疾病情報センター」
https://www.shouman.jp/

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