お子さんが慢性疾患と診断されると、体調や治療のことだけでなく、これからかかる医療費についても気になるのではないでしょうか。
通院や薬、検査などが長く続く場合、医療費が家計に与える影響も無視できません。
「どのくらい費用がかかるのか」「利用できる助成制度はあるのか」と不安に感じるご家族もいると思います。
そこで知っておきたいのが、「小児慢性特定疾病医療費助成制度」です。
この制度は、子どもの慢性疾病のうち、国が定める対象疾病について、医療費の自己負担額を軽減するものです。
対象となる疾病や認定基準、所得に応じた自己負担上限額などが定められています。
ただし、診断された疾病がすべて対象になるわけではありません。
対象疾病に該当するか、認定基準を満たしているかなどを確認する必要があります。
この記事では、小児慢性特定疾病とは何か、医療費助成の対象となる条件、自己負担額、申請方法、ほかの医療・福祉制度との違いについて解説します。

監修者:坂東 知子(ばんどう ともこ)
経歴
大阪急性期総合医療センター 救急病棟にて12年勤務。
実績
令和2年に「こどもデイサービスさくら」を設立。
現在は3事業所を運営し、これまでに50名以上の医療的ケア児・重症心身障害児の支援に携わる。
資格・専門
看護師・保育士
専門分野
・医療的ケア児支援
・重症心身障害児支援
・在宅医療・在宅ケア
・小児看護
小児慢性特定疾病とは

参照:photoAC
小児慢性特定疾病とは、子どもに多く見られる慢性疾患のうち、国が「長期にわたる治療が必要で、医療費の負担が重い」と認定した疾患のことです。
この制度は、児童福祉法に基づいて実施されています。
病気の子どもとその家族を支えるという目的で作られており、疾患ごとに定められた「状態の程度(認定基準)」を満たすお子さんに対して、医療費の自己負担分の一部を国が助成します。
令和8年(2026年)6月現在、対象疾患は16疾患群801疾病となっており(令和7年4月1日より13疾病が追加)、重症心身障害児の基礎疾患となりやすい神経・筋疾患や染色体・遺伝子に変化を伴う症候群なども多く含まれています。
小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/search/disease_list
対象となる16疾患群

参照:photoAC
対象となるのは以下の16疾患群に属する801疾病です。
・悪性新生物 ・慢性腎疾患 ・慢性呼吸器疾患 ・慢性心疾患 ・内分泌疾患 ・膠原病 ・糖尿病 ・先天性代謝異常 ・血液疾患 ・免疫疾患 ・神経・筋疾患 ・慢性消化器疾患 ・染色体または遺伝子に変化を伴う症候群 ・皮膚疾患 ・骨系統疾患 ・脈管系疾患
重症心身障害児に多く見られる疾患としては、神経・筋疾患(脳性麻痺を除く先天性の神経・筋疾患)や染色体・遺伝子に変化を伴う症候群(ダウン症候群・18トリソミー)が該当するケースが多くあります。
ただし、同じ疾患群に含まれる疾患であっても、疾病の状態の程度(認定基準)を満たしていない場合は対象になりません。
自分のお子さんが対象になるかどうかは、主治医または小児慢性特定疾病情報センターで確認できます。
対象となるお子さん

参照:photoAC
原則18歳未満が対象です。
ただし、18歳になる前からすでにこの制度を利用しており、引き続き治療が必要と認められる場合は、20歳未満まで継続して利用できます。
なお、この制度は「申請主義」です。
申請が認められた場合に発行される受給者証の開始日は「申請日」となりますので、診断を受けたらできるだけ早く申請を始めることが大切です。
医療費助成の内容

参照:photoAC
自己負担が2割に軽減される
通常、健康保険の自己負担割合は3割(未就学児は2割)ですが、この制度を利用すると一律2割負担に軽減されます。
月ごとの自己負担上限額が設定される
さらに、世帯の所得に応じて1か月あたりの自己負担上限額が設定されます。
上限額に達した場合、それ以上の医療費は支払い不要になります。
【自己負担上限額の目安(月額)】
| 階層区分 | 一般 | 重症 | 人工呼吸器等装着者 |
| 生活保護等 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 低所得Ⅰ(年収80.9万円以下) | 1,250円 | 500円 | 500円 |
| 低所得Ⅱ(年収80.9万円超) | 2,500円 | 500円 | 500円 |
| 一般所得Ⅰ(市区町村民税7.1万円未満) | 5,000円 | 2,500円 | 500円 |
| 一般所得Ⅱ(市区町村民税7.1万円以上25.1万円未満) | 10,000円 | 5,000円 | 500円 |
| 上位所得(市区町村民税25.1万円以上) | 15,000円 | 10,000円 | 500円 |
出典:厚生労働省「小児慢性特定疾病対策の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000078973.html
人工呼吸器を装着しているお子さんは、所得にかかわらず月額500円が上限となります。
重症心身障害児や医療的ケア児のご家族にとっては、特に大きな助けになる制度です。
助成の対象となる医療費
助成の対象となるのは、指定医療機関における保険診療の適用分と入院時の食費(1/2自己負担)です。
交通費・消耗品・文書料・個室料金など保険診療外の費用は対象外となります。
受診する医療機関が「指定医療機関」かどうかは、お住まいの自治体または病院窓口で確認しましょう。
申請の流れ

参照:photoAC
STEP 1|主治医または自治体窓口に相談する
まず、主治医か、お住まいの都道府県・指定都市の担当窓口(子ども家庭課・保健福祉課など)に申請について相談しましょう。
必要書類や手続きの方法を案内してもらえます。
STEP 2|医療意見書(診断書)を医師に記入してもらう
申請には、小児慢性特定疾病指定医の資格を持つ医師が記入した専用の「医療意見書」が必要です。
かかりつけの主治医が指定医かどうかを確認しましょう。
医療意見書の様式は、小児慢性特定疾病情報センターのホームページからダウンロードできます。
STEP 3|必要書類を自治体窓口に提出する
以下の書類を、お住まいの自治体の担当窓口に提出します。
・申請書
・医師記入済みの医療意見書
・住民税課税証明書
・健康保険証の写し
・その他、自治体によって異なる書類
自治体によっては追加書類が必要な場合や、一部書類の添付が省略できる場合があります。
提出前に窓口に確認しましょう。
STEP 4|医療受給者証の交付を受ける
申請が認められると、「小児慢性特定疾病医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」が交付されます。
医療機関を受診するたびに両方を窓口で提示します。
受給者証の有効期間は原則1年で、毎年更新が必要です。
注意:申請が遅れると遡れる期間に限りがある
令和5年10月の法改正により、申請日よりさかのぼって医療費を受給できるようになりました。
しかし、診断を受けてから手続きまでに時間が空いてしまうと、さかのぼれる期間(原則1か月、最長3か月)を超えた分の医療費は自己負担になってしまいます。
重症患者認定を受けると上限額がさらに下がる

参照:photoAC
小児慢性特定疾病の認定を受けているお子さんが、以下のいずれかに該当する場合は、「重症患者認定」を別途申請することで、自己負担上限額がさらに軽減されます。
・医療費総額(10割)が月50,000円を超える月が年間6回以上ある場合
・現行の重症患者基準に適合する場合
重症患者認定の申請は、通常の小児慢性特定疾病の認定申請とは別に行う必要があります。
該当する可能性がある場合は、主治医または担当窓口に相談しましょう。
他の医療費助成制度との関係

参照:photoAC
小児慢性特定疾病の医療費助成は、他の制度と組み合わせることで、さらに負担を軽減できる場合があります。
乳幼児・子ども医療費助成との併用
各自治体が独自に実施している「乳幼児・子ども医療費助成」と、この制度は併用できます。
国の制度(小児慢性特定疾病)が優先して適用され、残った自己負担分に対して自治体の制度が適用される仕組みです。
自治体によっては通院1回につき数百円の自己負担が設定されている場合でも、小児慢性特定疾病の月額上限に達した後は自己負担ゼロになる、などメリットが生まれるケースがあります。
指定難病の医療費助成との違い
指定難病の医療費助成制度(特定医療費)とは別の制度です。
主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 小児慢性特定疾病 | 指定難病(特定医療費) |
| 根拠法 | 児童福祉法 | 難病法 |
| 対象年齢 | 18歳未満(最大20歳未満) | 年齢制限なし |
| 月額上限 | 最大15,000円 | 最大30,000円 |
| 入院時食費 | 1/2自己負担 | 全額自己負担 |
小児慢性特定疾病は、指定難病と比べて月額上限が約半額であり、入院時の食費助成もあるなど、お子さんへの支援という観点でより手厚い内容です。
なお、この2つの制度は国の制度同士のため併用できません。
どちらの対象にもなり得る場合は、主治医や担当窓口に相談して、最も有利な方法を選びましょう。
自立支援医療(育成医療)との関係
自立支援医療(育成医療)は、身体に障害のある18歳未満のお子さんが、手術などの治療によってその効果(改善)が見込まれる場合に対象となる制度です。
自己負担が原則1割に軽減されます。
育成医療と自治体の「乳幼児・子ども医療費助成」は併用可能です。
この場合も国の制度(育成医療)が優先して適用され、残った自己負担分を自治体が助成する流れになります。
なお、小児慢性特定疾病の対象ではない病気であっても、胃ろう造設など特定の医療行為については育成医療の対象となる場合があります。
どの制度を使うべきかは、医療ソーシャルワーカーや相談支援専門員に相談するのが最も確実です。
制度を知らないと損をする|申請主義への注意

参照:photoAC
この制度を含む多くの支援制度は「申請主義」です。
申請しなければ受けられません。
診断を受けた段階で主治医や病院の医療ソーシャルワーカーに「助成制度が使えますか?」と一言確認することが、大きな一歩になります。
「制度があることを知らなかった」「申請が遅れて遡れる期間が限られた」というケースは多くあります。
診断後はできるだけ早く情報収集と申請を始めましょう。
まとめ

参照:photoAC
小児慢性特定疾病医療費助成制度は、令和8年(2026年)6月現在、16疾患群801疾病を対象とした、国が行う医療費支援の制度です。
自己負担が2割に軽減され、月額上限も設けられるため、長期治療を続けるご家族の負担を大きく和らげてくれます。
人工呼吸器等を装着しているお子さんの場合、世帯の所得にかかわらず月額の自己負担上限額が「500円」に据え置かれる特例があります。
さらに、大阪府内の「こども医療費助成」や「重度障がい者医療費助成」と併用することで、この500円の自己負担分についても実質的に助成・還元されるケースが多く、医療的ケア児のご家庭にとって非常に大きな支援制度となっています。
「うちの子は対象になるの?」と思ったら、まず主治医または市区町村の担当窓口に相談することが最初の一歩です。
一人で調べて悩まず、専門家の力を借りながら、使える制度をしっかり活用してください。
参考文献
厚生労働省「小児慢性特定疾病対策の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000171990.html
小児慢性特定疾病情報センター「対象疾病」(令和7年4月1日版)
https://www.shouman.jp/disease/
小児慢性特定疾病情報センター「小児慢性特定疾病のための医療費助成制度」 https://www.shouman.jp/assist/
こども家庭庁「医療的ケア児等とその家族に対する支援施策」 https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/care-ji-shien/
厚生労働省「自立支援医療(育成医療)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/index.html


コメント