重症心身障害児のてんかん発作|対応方法と親が知っておくべきこと

てんかん

「突然、子どもの体がガクガクと震え始めた。どうしていいかわからず、ただそばに座っていることしかできなかった」
そのような経験をされた保護者の方は、決して少なくありません。

重症心身障害のある我が子がてんかんと診断されたとき、不安や戸惑い、そして「これから先、どう向き合っていけばいいのだろう」という気持ちを感じるのは、ごく自然なことです。

てんかんという病気は、正しく理解し、適切に対応することで、日々の生活の安心感が大きく変わります。

「発作が起きてもパニックにならずに対応できた」「何を観察すればいいかわかった」という積み重ねが、お子さんとご家族の生活を少しずつ支えてくれます。

この記事では、重症心身障害児のてんかんについて、発作が起きたときの対応方法・日頃から知っておきたいこと・治療・日常生活での注意点をわかりやすく解説します。

てんかんのことをこれから知りたい方にも、すでに向き合っておられる方にも、少しでも安心のきっかけになれば幸いです。

監修者:坂東 知子(ばんどう ともこ)

経歴
大阪急性期総合医療センター 救急病棟にて12年勤務。
実績
令和2年に「こどもデイサービスさくら」を設立。
現在は3事業所を運営し、これまでに50名以上の医療的ケア児・重症心身障害児の支援に携わる。
資格・専門
看護師・保育士
専門分野
・医療的ケア児支援
・重症心身障害児支援
・在宅医療・在宅ケア
・小児看護

重症心身障害児とてんかんの関係

参照:photoAC

合併率は60〜70%と非常に高い

重症心身障害児(重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複している子ども)において、てんかんの合併は60〜70%と極めて高いです。

そして、そのほとんどが明らかな脳の病変や構造異常を背景とする症候性てんかん(構造的てんかん)に分類されます。
重症心身障害児を育てる保護者にとって、てんかんは決して「まれな病気」ではなく、多くのご家族が向き合っている非常に身近な課題であることがわかります。

日本小児神経学会

難治性のケースが多い

治療抵抗性のてんかんが多く、約30〜40%は月1回以上の発作を示す難治性の経過をとるとされています。
またその多くが大人になってからも継続します。

長期にわたって向き合っていく必要があるからこそ、正しい知識と無理のないケアの体制を整えることが大切です。

日本小児神経学会

てんかんとは何か

てんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰な電気信号を出すことで、意識を失ったり、体がけいれんしたりする発作を繰り返す病気です。
発作は突然始まることもありますし、何かの刺激が入ることで起こる場合もあります。

そして自然に終わることもありますが、発作によっては断続的に続く場合もあります。

発作が長時間続けば、呼吸にも影響し、命にかかわることもありえます。
重症心身障害児の場合、四肢の麻痺・変形・拘縮があるため、発作の症状がわかりにくいケースもあります。

「いつもと様子が違う」「ぼんやりしている時間が長い」といった微細な変化がてんかん発作であることも少なくないため、日常的な観察が特に重要になります。

てんかん発作の種類

参照:photoAC

てんかん発作には大きく分けて「全般発作」と「焦点発作(部分発作)」があります。

お子さんの発作の種類を理解しておくことで、対応の仕方や医師への伝え方が変わってきます。

全般発作

脳全体に異常な電気信号が広がることで起こる発作です。

強直間代発作(大発作)

全身が硬直(強直)したあと、ガクガクとけいれん(間代)する発作です。

意識を失い、数分で自然に治まることが多いですが、見た目のインパクトが強く、保護者が最も驚きやすい発作のひとつです。

欠神発作

重症心身障害児における欠神発作は、一瞬ぼーっとするだけの短時間の意識消失です。

しかし、実際には発作が長く続く「非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)」との見極めが極めて重要であり、この鑑別こそが子どもの安全を守る上で大きなポイントとなります。

ミオクロニー発作

体の一部または全体が瞬間的にピクッと動く発作です。

軽微なため見逃されやすいですが、繰り返し起こることがあります。

脱力発作(アトニー発作)

突然筋肉の力が抜けて倒れる発作です。

転倒による頭部のけがに注意が必要です。

焦点発作(部分発作)

脳の一部から始まる発作です。

意識がある状態のものと、意識が曇るものがあります。

手足の片側だけがけいれんしたり、顔がひきつったりすることがあります。

発作が起きたときの対応方法

参照:photoAC

発作が起きたとき、最も大切なのは「落ち着いて、安全を確保し、様子を観察する」ことです。

パニックにならず、以下の手順で対応しましょう。

発作中にすること(安全確保と観察)

周囲の危険なものを取り除く

頭の下に柔らかいもの(タオルやクッション)を敷き、机の角や医療機器のチューブなど、けがにつながるものを遠ざけます。

無理に体を押さえつけない

発作の動きを止めようとして強く押さえると、骨折などのけがにつながります。

時間を計る

発作が始まった時刻を確認します。

持続時間は、救急搬送の判断や医師への報告に欠かせない情報です。

発作がおさまってからすること(気道確保と休息)

体を横向きにする

けいれんがおさまったら、体を横向き(側臥位)にします。

これは嘔吐物や唾液による窒息を防ぐための重要な対応です。

意識が戻るまで静かに寝かせる

発作直後は意識が曇り、眠り込むことが多いため、そのまま休ませます。

発作中・発作直後に「絶対にしてはいけないこと」

・大声をかける、叩く、体を揺する(発作は止まりません)
・口の中に指やタオルなどを入れる(口内を傷つけたり窒息の原因になります)
・意識が完全に回復する前に、水や薬を飲ませる

救急車を呼ぶ必要がある発作

参照:photoAC

以下の状況に当てはまる場合は、すぐに救急車を呼んでください。

・けいれん発作が5分以上続いて止まらない。 
・発作と発作の間に意識が回復しないまま繰り返す。
・短い間隔で発作を何度も繰り返す。 
・発作後に呼吸が回復しない。
・顔色が悪い状態が続く。

特に「5分以上続くけいれん」は、てんかん重積状態(発作が長引いた危険な状態)につながる可能性があるため、迷わず119番に連絡しましょう。

主治医から発作時の座薬(ジアゼパム坐薬など)を処方されている場合は、「発作開始から何分で座薬を使うか」「座薬使用後、何分止まらなければ救急車を呼ぶか」の事前指示に従ってください。

レスキュー薬の特徴と違い

必ず医師の指示や事前の処方・指導に基づいて使用してください。

ダイアップ坐剤

お尻から挿入し、主に熱性けいれんの予防や24時間以内の再発抑制に効果を発揮します。

ブコラム口腔用液

18歳未満を対象とした口腔用液(頬粘膜投与)で、けいれん重積状態などの発作を速やかに抑えます。

スピジア点鼻液

2歳以上を対象とした日本初の経鼻投与型のジアゼパム製剤であり、医療機関外でも使用可能な発作止めです。

発作の観察と記録の重要性

参照:photoAC

てんかんの診断・治療方針の決定において、発作の様子を観察・記録することは非常に重要です。

医師の目の前で発作が起こることはまれであるため、保護者や支援者による記録がそのまま診断の手がかりになります。

観察しておきたいポイント

・発作が起きた時刻・曜日・状況(睡眠中か覚醒中か、食事前後か)
・発作の始まり方(体のどの部分から始まったか)
・体の動き(全身か片側か、硬直かガクガクか)
・目の動き(上を向いていたか、どちらかに向いていたか)
・顔色・唇の色の変化 ・発作の持続時間(始まりから終わりまで)
・発作後の様子(すぐに意識が戻ったか、ぼんやりしていたか、眠ったか)
・けがの有無

動画での記録がおすすめ

スマートフォンで発作の様子を動画撮影しておくことは、医師への情報提供として非常に有効です。

「文字で説明するのが難しい」という場合でも、動画があれば発作の特徴を正確に伝えられます。

日頃から「発作記録表」をつけておくことで、発作の頻度・時間帯・誘因のパターンが見えてきます。受診時にそのまま医師に見せることができるため、記録の習慣化をおすすめします。

てんかんの治療について

参照:photoAC

重症心身障害児のてんかんの治療は、基本的には通常のてんかんと同様に抗てんかん薬による薬物療法が中心です。

抗てんかん薬による治療

抗てんかん薬は、脳の神経細胞の過剰な電気信号を抑えることで発作を起こりにくくする薬です。

発作のタイプ・お子さんの年齢・体の状態・ほかの薬との相互作用などを考慮して、主治医が最適な薬を選びます。

重要なのは、決められた時間に毎日規則正しく服薬を続けることです。

飲み忘れや自己判断での中止は、発作の悪化やてんかん重積状態のリスクを高めます。

服薬管理で気をつけること

・毎日同じ時間に服薬する。飲み忘れに気づいた場合の対処を事前に医師に確認しておく。
・学校・デイサービス・訪問看護など関係するすべての人と服薬スケジュールを共有する。
・外出先・旅行先にも必ず薬を多めに持参する。
・お薬手帳(または最新のページのコピーやスマホの写真)を常に持ち歩く。

年齢(脳の発達)に伴う変化への対応

小児てんかんの多くは年齢(脳の発達)に伴って発症し経過する特徴があります。

重症心身障害児のてんかんにおいても年齢に伴う変化は少なからず認められ(特に思春期・青年期)、子どもの成長に合わせた長期的な視点を持って、主治医と相談しながら対応していくことが大切です。

日常生活での注意点

参照:photoAC

発作を誘発しやすい要因を把握する

発作が起こりやすくなる「誘発因子・助長因子」を把握しておくことで、日常生活の中でリスクを減らすことができます。

重症心身障害児でよく見られる誘発・助長因子には以下のものがあります。

・睡眠不足
・夜更かし 
・体調不良、発熱 
・疲労・過労 ・入浴(特に長湯・熱いお湯)
・強い光の刺激(光過敏のある場合)
・精神的なストレスや興奮

入浴時の注意

入浴中の発作は溺水のリスクがあるため、特に注意が必要です。

一人での入浴は避け、湯船のお湯の量を少なめにする・シャワーを活用する・常に声がけをして反応を確認するなどの工夫をしましょう。

デイサービス・学校との情報共有

デイサービスや学校など、お子さんが日中過ごす場所には、必ず以下の情報を事前に伝えておきましょう。

・発作のタイプと典型的な症状
・発作が起きたときの対応手順
・救急車を呼ぶタイミング
・座薬など発作時薬の使用の可否と手順
・かかりつけ医と保護者の連絡先

書面でまとめて渡しておくと、スタッフが変わったときにも情報が引き継がれやすくなります。
あわせて、かかりつけや救急対応病院の診察券のコピーも一緒に渡しておくのがおすすめです。
万が一発作が止まらない場合でも救急隊へスムーズに情報共有ができ、より早く病院に到着できる可能性が高まります。

てんかんと診断されたご家族へ

参照:photoAC

「てんかん」という診断を告げられたとき、「一生この病気と向き合うのか」「発作が怖くて、外に連れていけない」と感じる方は多くいます。
その気持ちは当然です。

ただ、一つ知っておいてほしいことがあります。
てんかんは、正しい知識と適切な治療・対応があれば、多くの場合コントロールできる病気です。

発作が完全になくならなくても、「発作が起きても落ち着いて対応できる」「発作の前後の変化に気づける」という状態になることが、お子さんとご家族の生活の質を大きく変えます。

一人で抱え込まず、主治医・訪問看護師・デイサービスのスタッフ・相談支援専門員など、関わるすべての専門家と情報を共有しながら、チームでお子さんを支える体制を整えていきましょう。

まとめ

参照:photoAC

重症心身障害児のてんかん合併率は60〜70%と高く、多くのご家族が長期にわたって向き合う課題になるかもしれません。
発作が起きたときは、安全を確保し・体を押さえず・時間を計りながら落ち着いて観察することが基本です。
5分以上続くけいれん、または発作が繰り返す場合は迷わず救急車を呼んでください。

日頃から発作の様子を記録し、主治医に正確に伝えることが治療の改善につながりますし、服薬管理・誘発因子の把握・デイサービスや学校との情報共有を丁寧に積み重ねることで、お子さんの生活の安心と安全が守られます。

てんかんという診断に不安を感じているご家族の方は、まず正しく知ることが不安を安心に変える最初の一歩になります。
ぜひ、担当の医師や支援者、私たち放課後デイサービスに相談しながら、一歩ずつ進んでいただければ幸いです。

参考文献

一般社団法人 日本小児神経学会「Q10:重症心身障害児に伴うてんかんについて教えてください」(2022年12月) https://www.childneuro.jp/general/6476/

公益社団法人 日本てんかん協会「発作の介助と観察」 https://www.jpa-net.or.jp/medical/assist/

てんかんinfo(UCBジャパン)「小児てんかん」 https://www.tenkan.info/about/child/

一般社団法人 日本小児神経学会「小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023」 https://www.childneuro.jp/about/6436/

こども家庭庁「医療的ケア児等とその家族に対する支援施策」 https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/care-ji-shien/

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